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個人経営の飲食店とは?働き方の実態|現場の中身から見ていく

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この記事でわかること
  • 注文を受けてから動くのではなく、店を開けて待つ側に回るということ
  • 客席に人が座る何時間も前から、一日の仕事が始まっている理由
  • 休む日を自分で決められるはずなのに、決めにくくなっていく仕組み

「店を出せば、自分のやり方で働けると思っていました」

飲食の店を出す、という言い方をします。ただ、出したあとに毎日していることは、その言葉からはあまり見えてきません。

頼まれた仕事を引き受けて、仕上げて、次へ渡す。飲食の店は、その形ではありません。

決まった場所の鍵を毎日開けて、来るかどうか分からない人を待ちます。何人来るかは、こちらでは決められません。

決められるのは、何時に開けるか、何を用意しておくか、いつ火を止めるか。そこまでです。

以下では、鍵を開ける前から札を裏返したあとまでを、厨房と客席の両側から書きます。これから店を持とうとする人が、自分の一日を頭の中に置ける形で書きます。

調理を行う台所と設備
目次

引き受ける仕事ではありません。開けて、待つ仕事です

他の多くのフリーランスは、依頼が来てから動きます。相手がいて、期日があって、仕上げれば次へ移ります。

飲食の店には、依頼が来ません。開けている時間の中に、誰かが入ってくるのを待ちます。

扉の前の道を歩く人の数が、その日の客席の埋まり方をだいたい決めます。雨が降れば減り、近くで工事が入れば流れが変わります。

こちらから動かせるのは、外に出しておく看板の向きと、扉を開けておくかどうかくらいです。あとは、道の側に置かれています。

この働き方では、仕事を受けるかどうかの判断がほとんど出てきません。判断が要る場面は、開ける前と、閉めたあとに集まっています。

忙しい日と暇な日を、自分で選ぶことはできません。どちらの日も、同じ時刻に鍵を開けて、同じだけの用意をして待つことになります。

誰も来ない日でも、店にいる時間は同じだけ流れます。座って待つのではなく、立って手を動かしながら待つことになります。

同じ通りでも、こちら側の歩道と向かい側では、歩いている人の数が違います。店を置いた側が、そのまま毎日の条件になります。

常連の付いていない最初の数か月は、扉が開かないまま過ぎる時間のほうが多くなります。それでも、開けていない店には誰も入れません。

仕込みや提供に使う食材と料理

客席に人が座る前に、一日の半分が終わっています

店の明かりがつく何時間も前に、裏の扉から入ります。まず冷蔵庫を開けて、前の日に残った分量を確かめます。

段ボールを開けて、洗って、切って、火を入れて、冷ます。客席には誰もいません。厨房の中だけで、数時間が過ぎます。

この間、話す相手はいません。声を出すのは、荷物を届けに来た人と、二言三言やり取りするときくらいです。

この時間は、外からは見えません。開店の札を裏返した時点で、一日の体力は半分ほど使われています

仕込みを減らせば朝は楽になりますが、その日に出せる品数も一緒に減ります。減らした分は、夕方の混む時間に手が止まる形で返ってきます。

逆に多く仕込めば、朝の時間が前へ延びます。開ける時刻は動かせないので、起きる時刻のほうが早くなります。

仕込みをどこで行うかには決まりがあって、住んでいる市町村ごとに求められる形が違います。開ける前に、担当の部署へ必ず問い合わせてください。

厨房の用意が済んだら、客席に出ます。椅子を下ろし、床を拭き、水と布巾を並べ、外の看板を出します。

調理を行う台所と設備

その日に出せる数は、椅子の数と手の数で止まります

同時に座れる人数は、置いた椅子の数で止まります。椅子を増やしても、厨房で同時に動かせる鍋の数は増えません。

昼の一時間に人が重なると、席は空いているのに料理が出ない、という時間ができます。扉を開けて入ってきた人が、そのまま出ていくこともあります。

人が来ないことより、来たのに出せないことのほうが、あとに響きます。

一人で回している店では、注文を取る手と火を見る手が同じ手になります。どちらかを止めないと、もう一方が動きません。

だから、品書きの数は自由には増やせません。増やした分だけ、冷蔵庫の中で出番を待つ材料が増えます。

品数の多い店ほど、厨房の中は狭くなります。手を伸ばす先が増えて、一皿あたりの歩数も増えていきます。

その日に出せる数は、腕前ではなく、この二つの掛け算で決まります。上限は、店をつくった時点でほぼ置かれています。

先に席を押さえる連絡を受けるかどうかも、この上限の中で決めます。受ければ埋まりますが、来なかった日の席はそのまま空きます。

厨房に人をもう一人入れれば出せる数は増えます。ただ、増えた分を毎日の客席が受け止めてくれるとは限りません。

調理を行う台所と設備

仕入れた物には、こちらの都合が効きません

明日の客の数を、前の日のうちに決めることになります。魚も野菜も、注文する時点では何人来るか分かっていません。

多く取れば残り、少なく取れば途中で品切れになります。どちらも、その日のうちに答えが出ます。

天気予報を、天気としてではなく客足として見るようになります。

雨の予報が出た日は、仕入れを一段軽くします。それでも降らなければ、夕方に品切れの札を出すことになります。

風の強い日や、急に冷え込んだ日も、扉の開く回数が変わります。同じ曜日でも、前の週と同じにはなりません。

残った材料を翌日へ回すかどうかは、毎日出てきます。ここで甘くすると、客足より先に味のほうが落ちます。

この読みは、開けた月からうまくいくものではありません。四つの季節を一周して、やっと前の年と見比べられるようになります。

仕入れ先へ自分で出向く店と、届けてもらう店があります。出向けば目で選べますが、そのぶん朝がもう一段早くなります。

調理を行う台所と設備

閉める日を決めるのは自分です。ただ、決めにくくなります

休みの日は自分で決められます。扉に札を出せば、その日は開けなくてよいことになっています。

ただ、閉めた日にも家賃と光熱の請求は同じだけ来ます。冷蔵庫は、閉めている日も動いています。

それより効くのは、扉の前まで来て引き返す人がいることです。

同じ曜日に来ていた人ほど、閉まっていた日を覚えています。次の週から来なくなることもあります。

旅に出るとなれば、冷蔵庫の中身を空にしてから出ることになります。戻った日は、また仕込みから始まります。

寝込んでも、代わりに火の前へ立つ人がいません。閉めるという判断は、いつも自分ひとりで下すことになります。

開ける時刻を週ごとに動かすと、通りの人は覚えられません。同じ時刻に開いていることが、そのまま店の名前の代わりになります。

近所付き合いも、その場所に付いてきます。ごみの出し方も、換気扇から出るにおいも、通りの側から見られています。

まとめ

個人経営の飲食店は、依頼を受けて動く働き方ではありません。決まった場所を、決まった時刻に開け続ける働き方です。

自由になるのは、何を出すか、何時に開けるか、どんな店にするかという中身のほうです。開けるかどうかは、だんだん選びにくくなっていきます。

縛られているのは時間だけでなく、場所もです。厨房は持ち運べないので、働く場所を替えるには店ごと動かすことになります。

そのかわり、目の前で食べている人の顔が、その日のうちに見えます。渡したものへの返事が、翌日を待たずに返ってきます。

この二つのどちらを重く感じるかは、何か月か開け続けてみるまで本人にも分かりません。外に出ているのは、開いている札と、湯気の立った皿だけです。

一人でも始められますか。

椅子の数を絞れば、一人で回している店はあります。ただし、注文を取る手と火を見る手が同じ一組になるので、同時に入れる人数のほうを先に決めることになります。

席を多く置いてから一人で回そうとすると、混む時間に必ず詰まります。椅子の数は、腕ではなく手の数に合わせて決める形になります。

毎日開けなければいけませんか。

曜日を決めて閉めている店はあります。ただ、閉める曜日を途中で動かすと、その曜日に来ていた人から順に足が遠のきます。

動かすなら、先に知らせておく形になります。扉の貼り紙を見るのは、その日に来てしまった人だけです。

料理の腕があれば続けられますか。

腕は入口です。続くかどうかを決めているのは、仕込みの量を毎日読み直すことと、天気と客足を並べて見る目のほうです。

味が落ちる前に、その二つが先に崩れます。崩れた分は、冷蔵庫の中と、夕方の空いた席に出てきます。

だから、腕を上げる時間と同じだけ、冷蔵庫の中を見る時間を取ることになります。どちらも厨房の中の話ですが、使う頭が違います。

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